九州・長崎・五島の特産“五島うどん”の産直・通販「五島手延うどん協同組合」

麺匠伝統の味「五島手延うどん」や五島の特産品を産地直送。

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旅館の女将から見た五島うどんの魅力

 五島うどんの発祥地、長崎県・上五島で現在、旅館業を営み、本当のおもてなしを実践していることで知られる女将、永田孝子さんに、上五島ゆかりの五島うどんの魅力について寄稿していただきました。

手延伝統の技と心を世界に伝えていきたい

 私どもが住む上五島・青方は、うどんづくりで有名な「船崎」に近く、その船崎では古くから、各家々で細々とお手製のうどんが作られていて、今のように有名になる前、五島うどんは、個人間で売買されていました。
 五島うどんはいま、五島列島の特産品という言われ方をしていますが、正確な表現ではないと思います。五島うどんはいにしえより五島列島の中の上五島のみに伝承されていて、下五島(福江島・久賀島・奈留島)にはありませんでした。
 私は昭和52年にこの島に嫁いできましたが、船崎には当時、20軒近い製麺所があったように記憶しています。
 初めて目にした五島うどんは、「そうめん」かと見紛うほど、細く、綺麗で、今でも船崎うどんのトレードマークになっている赤色の帯で束ねられていました。現在は200g、250gが主流になっていますが、当時は一袋400gが標準量だったと思います。
 食べ方は、特に昼食など、ほとんどと言っていいほど「地獄炊き」、または具を少し入れた、アゴ(トビウオ)だしの素うどんでした。
 なぜかと言うと、五島うどんは、このシンプルな食べ方が実は一番美味しくて、おまけに手間のかからない料理というのが理由です。飽きが来ないので、誰でも喜んで食べているように思います。


素材本来の味を楽しむ上五島の伝統「地獄炊き」
 一般論として、新鮮な魚が獲れるところは料理のレパートリーが広がらないと言われます。それは、生のまま、刺身で食べるのが、余分な手間をかけなくても、素材本来の旨味が味わえるからです。
 手を加えても、せいぜい塩焼きか煮物です。唐揚げやムニエルなど香辛料で味付けして素材本来の味を変えてしまうことはよろしくないという考え方です。
 それと同様、五島うどんも、地獄炊きや素うどんであれば、焼きアゴのだしを含めて素材本来の味が楽しめますので、島の中では、今のようにいろいろなメニューが登場する余地がなかったように思います。


 旅館では、地獄炊きは生卵にからめるか、アゴだしにつけるかの2通りの食べ方を紹介しています。以前は生卵で食べる方が多かったようですが、今は全国的なアゴだしブームもあって半々の割合でしょうか。
 製麺所の異なる何種類かの五島うどんを食卓に並べて、お客様に食べ比べをしていただいたりもしています。こちらのうどんの方が喉越しがいい、こちらは香りがいいなどと、五島うどんを食べながら、お客様同士の会話が弾んでいます。
 ただ、ボリュームのある夕食のメニューに五島うどんを加えると、他の五島の料理がお腹に入らなくなります。上五島に来られたからには、新鮮なお刺身やお魚料理を存分に満喫していただきたいので、夕食はうどん汁を出すことにしています。

 昨今、五島うどんの必需品であるアゴが高価になり、一般の家庭では手に入りにくくなっています。また、アゴを焼く家庭も年々少なくなりました。一般の家庭がアゴだしの調味料から離れていくと、五島うどんの伝統の味もまた、遠くにいってしまうのではないかと危惧しています。


素材を無駄にするのは「もったいない」という心
 旅館の魅力の一つは食事ですが、うどんの製造過程で出る「つ」(ふしめん)や切れ端を無駄にするのはもったいないという観点から、茹でたあとに味噌汁や汁物の具に用いています。
 また、私の旅館では、名古屋のきしめんにヒントを得て、「つ」を茹で、土鍋に入れて味噌煮込みにしたり、茹でた「つ」に、鶏肉やタマネギを加え、ホワイトソースで洋風グラタンにしたりしてお客様に振る舞っています。


年々廃れていく郷土料理を復活させる活動に尽力
 上五島・青方に「あんめ」という郷土料理があります。「あつめ」が訛〈なま〉ったものです。
 同じく郷土料理に「煮染め」がありますが、この「あんめ」は、煮染めの材料の端材(里芋・ニンジン・ゴボウ・コンニャク(厚揚げ・干大根などは煮染めにする)を小口切りにして大鍋に入れ、あらかじめ茹でておいたうどん、または「つ」を入れて、醤油・昆布だしなどで味付けしたものです。
 煮染めは、冠婚葬祭のすべてに出る料理なので、煮染めの材料を活用して、手伝いに来てくれた人たちのまかない料理として、この「あんめ」が作られていました。
 法事のときは、精進料理として魚介類のだしを使わず、粉末調味料で味付けします。これを皆で食べながら、世間話をしたりして参列者同士の絆を深める役割も果たしていました。
 しかし、時代とともに「あんめ」を作る人が少なくなり、今ではほとんど目にすることがなかったので、過去、私ども「青方女将の会」(註)で、地域の伝統文化を継承する活動の一環として、この「あんめ」を当時のまま復活させる取り組みを行いました。


宿泊者は「幻の五島うどん」に感激されていた
 五島うどんはもともと、上五島という限定地域にだけ流通する食べ物でした。昔、旅館のお客様に五島うどんを振る舞うと、「これって、そうめんじゃないんですか?」と驚かれ、中には喉越し・歯ごたえの良さに大層感激される方もいらっしゃいました。
 それが20年余り前から、五島うどんがテレビや雑誌などで盛んに取り上げられるようになり、今ではその名が全国に知れ渡るようになりました、そのせいか、五島うどんを出しても、昔のようにびっくりされることはなくなりました。知名度が上がった証しですから、それはそれで、嬉しいことでもあります。

 最近、地方から旅行に来られたお客様から、住んでいる近くに五島うどんを食べられるお店がないとか、五島うどんを食べたくてもスーパーの棚に並んでいないなどという声が聞かれます。
 上五島ゆかりの五島うどんは、人一倍手間と時間のかかる「手延べ」の伝統製法をしっかりと守っていますから、大量生産と全国流通には大きなハードルがあると思います。しかし、麺匠の皆さんの叡智を結集して、讃岐うどんのように、五島うどんが全国各地で気軽に食べられる日が来ることを私は夢見ています。


Profile:
永田旅館女将 永田孝子
(ながた・たかこ)
 昭和19年2月、千葉県南房総市生まれ。関西調理師学校卒業。昭和54年、上五島地区旅館組合理事


註:
青方女将の会
 上五島に古くから伝わる伝統的な郷土料理や食文化について研究を重ね、今では食べられなくなった料理を復活させるなど地域の文化活動に力を注いでいる。古民家風 永田旅館、昭和のレトロな前田旅館はいずれも、本当のおもてなしを提供する老舗旅館として全国に知られる。

古民家風 永田旅館
〒857-4404 長崎県南松浦郡新上五島町青方郷1119
Tel.0959-52-2055



  • 五島うどんの歴史
  • 手延干し麺の定義
  • 手延うどんの製造工程

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